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経済学部・経済学研究科の教育
大学の教育は、大学が先端的な研究を担うという重要な役割も担っているために、教授陣の先端的な研究を紹介するというのが、従来の形でした。学生たちは、高度で専門的な知識を吸収して、社会にそれを還元していく役割を担っていたわけです。経済学部・経済学研究科においても、経済学や経営学の最新の研究成果を講義に反映して授業を行っています。その一方で、大学進学率が高くなり、先端の専門分野の教育だけでなく、教養人として最低限知っておかなければならないことを多人数にシステマティックに、効率よく教育する形に変わってきています。また、学生のキャリア形成を支援するような講義も行っています。このように大学教育が変わりつつある状況で、現実の経済にかかわる「基礎的分析力」と「自主的探究力」を養成することを目的とし、人間の営みである経済活動について深い洞察を与える講義と演習を提供しています。
部局長インタビュー
園田 正 教授
経済学部・経済学研究科長の園田正教授に5つの質問に答えて頂きました。
1. 経済学部・経済学研究科の強み(醍醐味)を教えてください。
経済学部・経済学研究科には,経済・経営に関係して,幅広い分野を研究対象とする教員がいます。最近では,経済学の分野では,ゲーム理論に基づいて企業の行動を研究する産業組織論,マクロ経済における金融部門の理論・政策分析を行う金融経済,所得分配と経済危機の関係を制度経済学から分析した研究などで,よい成果がでています。経営学・会計学の分野では,自動車産業における部品メーカーと完成車メーカーの関係の実証分析,会計基準と会計実務の世界的統一についての研究などで,よい成果が出ています。このように優れた研究を行う教員が,経済学・経営学の基礎科目・専門科目をしっかり教えます。履修する科目の中では,最近注目を浴びているデータサイエンスに強く関係した,統計解析・計量経済学の科目も充実しています。また,経済学の分野では,海外で学位取得した教員も多く,英語による講義も増えています。さらに,経済学部同窓会と連携して,企業から講師を招いて実務上の知識を学び,就職の準備をするための科目もあります。
2. 経済学部・経済学研究科の学生に大学生活を通じてどんな風に育ってほしいですか。
私は今年の新入生に次のような言葉を送りました。「現実社会に鋭い関心を持ち,専門知識を蓄え,多様な価値を探求しよう」。このメッセージには,二つの意味を込めています。一つは「人的資本」という考え方です。これは,会社が新しい工場に投資をするように,学生の皆さんが教育に投資をすることによって,知識や方法を蓄積して,能力を高めて,高い生産力を生み出すようになることを言います。経済学部に入学した方には,経済学・経営学の専門知識を身につけてもらい,社会に出たときに,高い能力を発揮して,様々な価値を見つけたり,生み出したりできるようになってもらいたいと思います。もう一つは,現実社会に強い関心をもってもらいたい,ということです。私の専門分野は農業経済ですが,私が農業経済学に関心をもった理由は,新聞記事でコメの貿易自由化の問題を知り,外国の米と日本の米では値段が10倍も違うという話があり,「なぜだろう」と思ったことです。このように,きっかけは何でもよいのですが,卒業したときには,現実社会に対する自分の「ものの見方」を身につけてもらいたいと思います。
3. 経済学部・経済学研究科のビジョンを教えてください。
経済学部では,いま,教育・研究・社会貢献の各項目について,中長期的なビジョンを見直しています。確定したことを一つだけ挙げれば,研究面で「デジタルデータ駆動型研究」を促進していき,教育面でもその成果を活用していく,という方針です。この言葉は聞き慣れないかもしれませんが,自然科学でいうデータサイエンスより広い研究範囲をカバーしています。具体的には,経済や経営についての数量データ,経営・会計・財務に関する定性的な判断,歴史的な文書・史料をデジタル化したデータを含めて,人文・社会科学的な大型データを対象とした研究のことを言います。より多くの経済学研究科の教員が,そういった大規模データに基づき,適切な分析手法を使った研究を進めることにより,各分野でエビデンスに基づく政策立案を行うなど,貢献できると考えています。
4. 園田先生ご自身が学生だった時、印象的な授業はありましたか。
私は,大学では商学部で学んでいましたが,学部2年生のとき,経済数学の先生が担当していた,3名の学生が参加する演習科目がありました。その演習では,数理経済学者で,ノーベル経済学賞を受賞した,ジェラール・ドブリューによる『価値の理論』の第1章を輪読しました。第1章は,この本で使う数学の準備をする部分なのですが,集合,関数,点列の収束の定義などから始まり,定理を一つずつ証明していくスタイルで,演習は進みました。演習の中では,1つの文を読むたびに,先生から「なぜそうなるのですか」と尋ねられ,そのつど説明や証明をする,という感じで,当時の私は大変苦労しました。苦労はしましたが,先生に根気強く指導していただいたおかげで,どうにか単位を取得できました。このような経験から,専門書では1ページ読み進めるのも大変なことがある,ということを学びました。また,その経験は,大学院生に入学してから,経済学研究科でミクロ経済学を受講したときに,大変役立ちました。
5. 高校生(経済学部へ入学を希望している学生)へのメッセージをお願いします。
名古屋大学・経済学部は,1920年に名古屋高等商業学校として創立されて以来,今年で創立100周年を迎えます。この記念すべき年を迎えて,いま,一番大きい講義室を刷新しています。経済学部の変化は,講義室だけではありません。教育面では,遠隔授業の活用について考えていきます。研究面では,ビッグデータなどを活用する研究に力を入れていきます。しばらくの間,変化は見えないかもしれませんが,いま,こうした様々な変化に取り組んでいます。皆さんには,ぜひ経済学部に入学していただき,私たちと一緒に新しい経済学部を築いていってほしいと思います。
(令和2年8月5日)