
教養教育院の教育
教養教育院では、全学教員の協力を得て教養教育(全学教育)を実施しています。教養教育院の提供する授業は、毎年、1900コマ程度に達しています。平成21年度からは、eラーニングの導入により英語教育の充実を図っています。
提供科目は大きく基礎科目と教養科目に分かれます。基礎科目は基礎セミナー、言語文化、健康・スポーツ科学、文系・理系基礎科目からなり、提供コマ数全体の9割近くを占めます。特に言語文化科目のコマ数は多く、ほぼ5割を占めます。基礎セミナーは大学への導入科目であり、文系学生2コマ・理系学生1コマが必修で280コマほど提供され、担当教員ごとに多彩なテーマが用意されています。理系の実験科目を含め、これら基礎科目の大半は実践型・体験型の授業であり、受講生の皆さんの自発的な取り組みが行われています。これに対して、教養科目は文系・理系・全学教養科目からなり、その多くが講義形式を取っています。
部局長インタビュー
戸田山和久 教授
教養教育院長の戸田山和久教授に5つの質問に答えて頂きました。
1. 教養教育院の一番の魅力を教えてください。
教養教育院は、すべての学部の学生さんが世界で活躍できる「勇気ある知識人」に育っていただくために、その基盤となる1800を超える科目を提供しています。そのために、名古屋大学のすべての先生方が協力しています。これだけの先生方が、それぞれの学問分野の垣根を越えて力を合わせていることが、教養教育院の一番の特徴であり魅力です。
2. 教養教育院では、本学の学生がどのように育ってほしいとお考えですか?
哲学者のカントは『啓蒙とは何か』の中で次のような趣旨のことを言っています。知性はすべての人に授けられている。違いは、そのように自分に与えられた知性を敢えて使う勇気があるかどうかだ。それゆえ啓蒙の標語は「敢えて賢かれ!」だ、と。固定化された先入観や世間の常識にとらわれず、事実や真理などの科学的根拠に基づいてものごとを自ら判断する勇気をもつ人になってもらいたいと思います。それが「勇気ある知識人」に「勇気ある」を付すことによって、私たちが期待していることです。
3. 教養教育院の授業の特徴、魅力はどんなところにありますか?
われわれ人類が直面している課題は、いくつもの問題が絡まり合ったとても複雑なものです。それらを解決するには、一つの分野では足りません。たくさんの分野の専門家が知恵を寄せ合う必要がありますし、彼らが互いを理解し合うことが必要です。教養教育院が行う全学教育は、さまざまな考え方や価値観をもつ学生の皆さんと先生方が互いに関わり合う場を提供しています。基礎セミナーでは、自分とは違う学部の学生と一緒に作業をすることになるでしょう。こうした知的交流の場を通じて、多様なものの見方・とらえ方に触れることが教養教育院での授業の最大の特徴・魅力です。
4. 戸田山先生ご自身が学生であったとき、印象的な授業はありましたか?
入学直後に受けた、「同じ」ということはどういうことかについて1年間考え続ける哲学の授業は印象に残っています。こんなことは普通、3秒も考えられないですもんね。哲学ってすごいね、と思いました。そのときはまだ自分が将来哲学者になるとは思ってませんでしたが。もう一つ、聖書学の授業もたいへんに刺激を受けました。4つの福音書を聖典としてではなく、歴史的文書として精密に解釈し、イエスという人の原像に迫る授業でした。人文学というものの奥深さを知りました。どちらも理科系学生として受けた授業でした。文系の授業ばかり記憶に残っています。
5. 高校生と大学生へのメッセージをお願いします。
大学では、学生を「教わる者」ではなく「ともに真理を探求する者」として扱います。大学では単に知識やスキルを受け取るだけでなく、研究を通じて新たな知が創り出される場面に参加することで学ぶというわけです。主体的な学びの姿勢に転換できるかどうかが、あなた方の大学での成功のカギです。あなた方の努力と幸運を祈ります。
(平成27年5月13日)