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開講部局:工学部・工学研究科
古橋武 教授
最終講義―座学・実験一体型講義のすすめ
授業時間: | 2019年度退職記念講義 |
日時 : | 2020/3/14 15:00-16:30 |
場所 : | IB電子情報館1階 IB015講義室 |
定年退職を迎えて
1988年に本学工学部に助手として赴任して以来,中断を挟んで,29年間を過ごさせていただきました.その間,ファジィ・データ解析の分野で教育・研究に注力してまいりました.産業界でのデータサイエンティストの需要の高まりの中で,当研究室の卒業生が活躍していることに,うれしさと頼もしさを感じています.学部生向けの講義では,学生に電気電子回路作りの楽しさを体験させようと製作演習付きの講義を模索してきました.前半45分を座学,後半45分を学生一人一人が毎週1回路を設計・製作する演習としました.先例のない演習では試行錯誤が尽きませんでしたが,学生からは「新鮮だった.楽しかった.大変だったけれど動いたときは感動した.座学の内容を深く理解できた.」との声が聞かれました.彼らの活躍を祈りつつ,今後はこの成果を発信していく所存です.
メッセージ
最終講義では「座学・実験一体型講義」を提案します.本講義では,学生一人一人が計測器と実験キットを保有し,座学の直後に実験を行う講義形態を座学・実験一体型講義と呼びます.多くの大学で電気電子系の学生実験は2年生後期もしくは3年生から開講されます.学部前半は座学中心であり,この間,学生には回路を触る機会がほとんどありません.座学・実験一体型講義では,最初の専門系科目の講義から,座学の直後に実験を行います.
ボードコンピュータの普及により,子供達は幼少期から,コンピュータで電子回路を動かして遊ぶことが簡単にできるようになりました.さらに,小・中・高校のプログラミング教育の必修化により,近い将来,大学に入学する学生の多くが電子回路の面白さを知っている時代が来ると,私は予想します.そのような学生に,回路に触らない電気電子工学の講義を2年近くも受けさせる形態はふさわしくありません.コンピュータを活用して電子回路を動かしながら法則・理論を学べる座学・実験一体型講義は,学生の興味を強く喚起することでしょう.座学の直後に具体例に触れることで,学生は法則・理論を理解し易くなります.
電子機器の発達により,手のひらサイズで1万円台のUSB計測器の性能が飛躍的に向上しました.このUSB計測器をノートパソコンにつなぐことで,電気電子情報系基礎科目の実験が可能となります.ブレッドボードを活用すれば,座学と同じ席で学生一人一人が実験できます.学生にノートパソコンを必携としている学科であれば,座学・実験一体型講義が実現可能です.
講義資料の1章と4章で筆者の考える座学・実験一体型講義を述べています.是非,ご一読下さい.