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開講部局:理学部・理学研究科
小田洋一 教授
最終講義 - 脳回路の成り立ちとはたらき
授業時間: | 2015年度退職記念講義 |
日時 : | 2016/3/11 16:30-17:30 |
場所 : | 坂田・平田ホール |
神経生理学 40年
名古屋大学では11年間お世話になりました。ここまで一言でいえば「脳のはたらき」を調べてきた40年間でした。それぞれの局面では不安もありましたが、振り返ってみると時代の流れと偶然がちょうど良いように働いて、興味深い研究と教育の機会を与えられたと思います。大学院生の1970年代後半は細胞内記録による神経回路の解析が一段落し、新しい研究方針が活発に議論されているなかで、私はネコの歩行標本で小脳の制御機序を調べたり、古典的条件付けに伴うシナプス新生を研究していました。
教員になって間もなく恩師を突然失い、フランスのパスツール研究所への留学がきっかけで、研究対象もサカナに変わりました。抑制性シナプスの可塑性を初めて実証して意気揚々と帰国し、医学部出身者が大勢を占める学会で成果を発表すると「魚に脳はあるんですか?」と質問を受け、愕然としました。しかし、その逆風のお蔭で、研究の面白さを積極的に説明せざるを得なくなり、従来の電気生理に加えてイメージング技術も開発し、運動制御の仕組みを調べることが出来ました。それまでの哺乳動物だけでなく、サカナ・チョウ・ハエ・線虫などの研究者とも交わるようになりました。
名大に来てからは、全くの素人だった分子生物学や生態学を若い人達に教えてもらいながら、「脳のでき方」にも手を広げることが出来ました。大学の運営を含めてお世話になったすべての方々に厚く御礼申し上げます。