




開講部局:環境学研究科
川邊岩夫 教授
最終講義 - 希土類元素の化学・地球化学とランタニド四組効果:「ヨルゲンセン―川邊の式」が意味するもの
授業時間: | 2014年度退職記念講義 |
日時 : | 2015/3/13 14:00-15:30 |
場所 : | 理学部E館101号室 |
何か本質的なことは成し遂げたのか?
教員として22年間の名古屋大学勤務を終え、停年退職を迎えます。学生・院生としての在籍年数を加えると、30年以上にわたる名古屋大学との係わりでした。お世話になった名古屋大学の皆さんに深く感謝致します。私は戦後ベビー・ブームの世代に属し、人数が多く、うごめく群衆の中に生きた感があります。
科学の研究分野で何か一仕事をしたい。だが、その何かは茫漠としている。そんな思いで学生時代がスタートし、自らの可能な道のりを探り出すことで大学院生時代を過した。そこで Publish or perish! の言葉を知る。この言葉には現実感があり、これを信じて20代後半を疾走した。しかし、何とか助手の席を得て、外国での研究員生活も経験すると、「何か本質的なことは成し遂げたのか?」と神様が耳もとで囁く。 Publish or perish! これで突き進むと、いつの間にか Publish and perish! となるのではないか? 30代にして「不都合な真実」の一端を理解したように思った。以後、衆目の集まる問題は選ばず、自らが大問題と納得するものを追う。結局、短い理論式(Jørgensen-Kawabe 式) に行き着いた。4f 電子の量子論が希土類元素化合物間の反応の熱力学量に現れることを記述する。この式とは20年以上付き合うが、裏切りがないのが嬉しい。定年退職も人生の一区切り。「神様の囁き」に答えるべく、今後も考え続ける所存です。