




講義ノート
課題
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以下の問題の中から1つ選び、関連する法律の条文を示しながら法的観点から検討を行い、自分がXであればどのような主張をするか、および、その当否について、3000字から4000字程度で述べなさい。
問題1
Xは国立の高校に入学した。この高校においては学年制が採られており、学生は各学年の修了の認定があって初めて上級学年に進級することができる。同校の進級や卒業などの認定に関する規程によれば、進級の認定を受けるためには、修得しなければならない科目全部について不認定のないことが必要であるが、ある科目の学業成績が100点法で評価して55点未満であれば、その科目は不認定となる。また、進級等規程によれば、休学による場合のほか、学生は連続して2回原級にとどまることはできず、同校学則及び退学に関する内規では、校長は、連続して2回進級することができなかった学生に対し、退学を命ずることができることとされている。
この高校では、保健体育が全学年の必修科目とされており、第一学年の体育科目の授業の種目として剣道が採用された。剣道の授業は、前期又は後期のいずれかにおいて履修すべきものとされ、第一学年の体育科目の点数100点のうち35点が配点された。だがXは信仰上の理由から、格技である剣道の実技に参加することは自己の宗教的信条と根本的に相いれないとの信念の下に、体育担当教員らに対し、宗教上の理由で剣道実技に参加することができないことを説明し、レポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨申し入れた。しかし高校側はこれを拒否し、剣道実技をしないのであれば欠席扱いにすると通知した。
Xは剣道の授業の際、服装を替え、サーキットトレーニング、講義、準備体操には参加したが、剣道実技には参加せず、その間、道場の隅で正座をし、レポートを作成するために授業の内容を記録していた。これに対し、高校側は剣道実技への不参加者に対する特別救済措置として剣道実技の補講を行うこととし、2回にわたって、Xに参加を勧めたが、Xはこれに参加しなかった。その結果、体育担当教員は、Xの剣道実技の履修に関しては欠席扱いとし、剣道種目については準備体操を行った点のみを2・5点と評価し、第1学年にXが履修した他の体育種目の評価と総合してXの体育科目を42点と評価した。これによりXは進級不認定とされ、高校の校長は、Xにつき第2学年に進級させない旨の原級留置処分をし、X及び保護者に対してこれを告知した。
翌年度においても、Xの態度は前年度と同様であり、学校の対応も同様であったため、Xの体育科目の評価は総合して48点とされ、剣道実技の補講にも参加しなかったXは進級不認定となり、校長はXに対する再度の原級留置処分を決定した。また、表彰懲戒委員会にてXにつき退学の措置を採ることが相当と決定され、校長は、自主退学をしなかったXに対し退学処分を告知した。
問題2
不動産の売買等を目的とする会社であるXが、Y市の水道事業の給水区域内にマンションの建設を計画し、Y市に建築予定戸数420戸分の給水申込みをした。しかしY市は、水道事業給水規則が、新たに給水の申込みをする者に対して「開発行為又は建築で20戸(20世帯)を超えるもの」又は「共同住宅等で20戸(20世帯)を超えて建築する場合は全戸」に給水しないと規定していることを根拠に、給水契約の締結を拒否した。
こうしたことが規定された背景には、次のような事情があった。全国有数の人口過密都市であるY市は、Y市固有の水源からの取水だけでは、給水量を確保し難い状況にあり、この状況が容易に改まるような事情はない。周辺の自治体からの受水も停止されるに至っている。そのためY市は給水量を賄うため、農業水利権者との契約により認可外水源取水しているが、これは河川法上の手続を経て取得した水利権に基づくものではなく、実際にも上水道のための水利権を取得することは甚だしく困難である。また、この契約上、農業用水の優先権が認められ、水源の水量が少なくなったときにはY市の取水が制限、停止されることになっている。
このようなことから、Y市が、確保し得る原水の量や給水し得る水量を需要が超えないようにするための諸策を講ずることなく、漫然と新規の給水申込みに応じていると、近い将来、需要に応じきれなくなることが容易に予測されていた。問題3
Xについて窃盗の被疑事実による逮捕状(以下「本件逮捕状」という。)が発付されていたところ、O警察署の警部補A外2名の警察官は、Xの身柄を確保するため、本件逮捕状を携行しないでX宅に赴いた。AらはX宅前でXを発見し、任意同行に応ずるよう説得した。しかしXは、警察官に逮捕状を見せるよう要求して任意同行に応じず、突然逃走したが、追いかけてきたAらに制圧され、逮捕された。Xはなおも抵抗したが、警察車両まで連れて来られ,同車両でO警察署に連行され,到着後間もなく警察官から本件逮捕状を呈示された。
本件逮捕状には、逮捕日の午前8時25分ころ、本件現場において本件逮捕状を呈示してXを逮捕した旨のA警察官作成名義の記載があり、さらに、同警察官は、同日付けでこれと同旨の記載のある捜査報告書を作成した。被告人は、逮捕された日にO警察署内で任意の採尿に応じたが、その際、Xに対し強制が加えられることはなかった。Xの尿について鑑定したところ、覚せい剤成分が検出されたため、数日後、Xに対する覚せい剤取締法違反被疑事件についてX宅を捜索すべき場所とする捜索差押許可状が発付され,既に発付されていた被告人に対する窃盗被疑事件についての捜索差押許可状と併せて同日執行された。X宅の捜索が行われた結果,被告人方からビニール袋入り覚せい剤1袋が発見されて差し押さえられた。このような状況において、Xが覚せい剤の違法所持と窃盗について起訴された。
問題4
大学付属病院で医学部助手として勤務するXは、現代医学では不治の多発性骨髄腫で入院中の患者の治療に当たっていた。そうした中、この患者の病状が悪化し、いびきのような呼吸をして疼痛刺激に全く無反応な状態となり、余命1、2日であると診断された。その際、患者の妻と長男から再三、治療中止を申し出られたXは悩んだ末、点滴等を抜去させた。それでもなお長男が「いびきを聞いているのが辛い」などと強く訴えたため、呼吸抑制の副作用がある鎮静剤を注射した。それでも変化がなかったために、長男が「まだ息をしているじゃないですか」と激しく詰め寄った。Xは追い詰められたような心境から、要求どおりすぐに息を引き取らせてやろうと考え、人工心肺装置を停止させ、患者を死亡させた。こうした事実の下で、Xは殺人罪で起訴された。
問題5
X夫妻の妻は、妊娠中に子宮癌であることが判明し、子宮摘出を余儀なくされ、胎児も失った。子供を産めない体になっただけではなく、新たな命の芽を摘み取ってしまったことについて、X夫妻は悲しみに打ちひしがれた。周囲の励ましや助言もあり、X夫妻は海外に赴き、双方の精子と卵子を使い体外受精をさせ、これを別の女性の子宮に移植し、子供を出産してもらうことにした。この代理出産は無事に行われ、代理母となった女性に一定の報酬を支払うのと引き換えに、出産した子供はX夫妻が引き取った。日本に戻り、産まれた子供をX夫妻の子供として出生届をしたところ、この届出は受理されなかった。
問題6
XはY大学に合格し、合格通知と入学手続書類が送られてきた。Y大学に入学するためには、必要書類を提出するとともに、入学金30万円と前期の授業料等50万円を納付しなければならないとされており、一度納付された学納金についてはいかなる理由があっても一切返還されない旨の説明もなされていた。こうした入学手続に沿ってXは定められた金額を納付し、入学手続書類を提出した。しかし、その後Xは別の国立大学に合格したため、新学期が始まる前にY大学の入学を辞退し、当該国立大学に入学した。

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