
- ホーム >
- 退職記念講義アーカイブ >
- 退職記念講義2012 >
- 最終講義 - 生物とは何か? >
- 授業ホーム




開講部局:工学部・工学研究科
美宅成樹 教授
最終講義 - 生物とは何か?
授業時間: | 2012年度退職記念講義 |
日時 : | 2013/3/7 15:00- |
場所 : | IB電子情報館2階大講義室 |
「夢の時間」
私が名古屋大学に赴任してからちょうど10年になりました。前の大学では生物系の学科だったので、物理の不得意な生物系の学生達と過ごしていましたが、名古屋大学では一転して生物をほとんど知らない応用物理の学生達と過ごすことになりました。そして、この環境の変化によって、私の脳の働きがどう変わるかということを、私は大いに楽しみにしていました。生物系から物理系に移ったことに加えて、名古屋大学では単身赴任だったので、すべての時間と空間が自分のものとなり、結果的に私の研究のイメージは大きく膨らみました。学生達やポスドクの人達のもたらすデータを脳の空間で転がすうちに、生物のシステムにおける“組み合わせ爆発”という難問が、自然では見事に回避されている様子が玉ねぎの皮をはがすように見えてきました。生物の進化、多様性などの問題が、配列の物性分布の解析によってきれいに整理されていったのです。この研究のプロセスは、わくわくするような「夢の時間」でした。すばらしい「夢の時間」を与えていただいた名古屋大学と研究に参加してくれた人達に深く感謝したいと思います。それを名古屋大学にいる間に世の中に出したいと思い、今年の1月には専門書「ゲノム系計算科学——バイオインフォマティクスを超え、ゲノムの実像に迫るアプローチ」(共立出版)を、3月には啓もう書「生物とは何か?——ゲノムが語る生物の進化・多様性・病気」(共立出版)を出版しました。それらの本を手にとって、私の名古屋大学での成果を少しでも眺めていただければ幸いです。そして、今後もよろしくお願いいたします。