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開講部局:工学部・工学研究科
椿淳一郎 教授
最終講義 - 私の通信簿—大学人たり得たか—
授業時間: | 2011年度退職記念講義 |
日時 : | 2012/3/19 14:30-16:00 |
場所 : | ES総合館1階ESホール |
「勇気ある知識人」の皆さまへのお願い
1971年に大学院修士課程に入学してから41年が経過した。途中他機関で働いた7年間を除いて、34年間お世話になった名古屋大学に心よりお礼を申し上げたい。
私が教授として工学研究科に戻った1994年は、予算が年度内に成立せず学生達に迷惑をかけた。当時はバブルがはじけた直後で、口を開けばカイカク、カイカクと言われ始めた時代であった。大学もご多分に漏れず、教養部解体、大学院重点化そして独法化とカイカクは着実に進行した。カイカクのキーワードは「競争」で、大学を競争的環境に置くことで、効率良く研究成果を生みだし社会の望む人材を育成しようという狙いであったが、結果は果たしてどうであろうか。
競争とは勝負であるから、勝ち負けを決める判定基準(価値観)が必須となる。大学を大学たらしめているのは、研究においても教育においても多様な価値観が無条件に等しく認められることなので、「競争」が大学に馴染まないことは火を見るより明らかである。そもそも新制大学は、特定の価値観(軍国主義)の押しつけに抗しきれなかった、戦前の大学制度に決別する決意を持ってスタートしたのではなかったのか。喉元を過ぎて熱さを忘れたのか、同じ轍を踏んでいるよ うに私には思える。
カイカクが断行されて久しく、その生傷は痛々しい。生傷が致命傷になる前にカイカクを改革して下さるよう、「勇気ある知識人」である皆さまに強くお願いし、期待したい。