




開講部局:多元数理科学研究科
庄司俊明 教授
最終講義 - Characters, character sheaves and beyond
授業時間: | 2011年度退職記念講義 |
日時 : | 2012/3/14 13:00-14:00 |
場所 : | 多元数理科学研究棟(理1号館)5階509号室 |
表現論の流れに身をまかせ
私が大学院生だった1970年代の中頃、ドリーニュトルスティックによるプレプリントが廻ってきた。電子メールなどなかった当時、コピーを重ねて薄汚れたその論文は、有限簡約群の表現論に関する重要な予想を全く新しい手法で解決した劃期的な論文だった。そこで使われた幾何的手法は当時の有限群の表現論の常識を打ち破る斬新なもので、我々にはまるで天上の世界の論理のように思えたのだった。有限簡約群の表現論の最も重要な問題である、既約表現の分類とその指標の記述は、その後ルスティックの主導のもと1980年代から1990年代にかけておおむね完成した。
私は、どういう巡りあわせか研究の初期段階からルスティックの仕事につきあうことになり今に至っている。1970年代前半の深い霧に覆われた、混沌と焦燥の時代を私は懐かしく思い出す。そこには立派な理論があり、予想もあるのに、 頂きに至る道は途絶えていた。我々はなすすべもなくまどろんでいた。そしてその後に激動の時代がやって来た。実際、80~90年代に表現論の多くの分野で爆発的な発展がみられ、それらを統合する新世界が嵐の中に出現したのだった。このような沸騰する時代の中で研究生活を送り、多少なりとも自分の役割を果せたことを私は幸せに思う。
私はこの3月で定年だが、数学者に定年はない。数学者は死ぬまで数学者でいるしかないだろうから、私は自分の夢を追い続けることにしよう。