
- ホーム >
- 退職記念講義アーカイブ >
- 退職記念講義2011 >
- 最終講義 - 有機導体の研究をふりかえって >
- 授業ホーム




開講部局:理学部・理学研究科
鈴村順三 教授
最終講義 - 有機導体の研究をふりかえって
授業時間: | 2011年度退職記念講義 |
日時 : | 2012/3/5 15:00-16:00 |
場所 : | 理学部B5講義室(B館501号室) |
定年退職にあたって
名古屋大学に入学して物理を志し、いくつかの他大学での研究生活を経験した後、教員として再び名古屋大学にお世話になり21年が経ちました。ついこの間まではまだまだ先のことであると思っていたのに、定年をむかえる時がやってきました。これまで無我夢中で務めてきましたが、何とか研究と教育を続けられたのは、今までに関わってきた周りの多くの人のお蔭であると感謝しています。
私は、自然科学の中で物性物理の理論、特に有機物質が電気を通すことに関する基礎的なことを研究してきました。大学院時代に当時話題となっていたこの分野の研究を始め、その後は自分なりにその分野を広げたつもりではいましたが、今も当時の先生に教わった延長線上にあります。やはり若いときに受けた経験はいつまでも大きな影響を与えるものです。低次元導体における電子の集団運動、擬一次元物質の絶縁状態での電子の鎖内閉じ込め、有機超伝導体の研究の中で偶然に発見したディラック電子等、地道な努力の中で意外な結果に一喜一憂し、様々なことを学びました。物質の現象と向き合う研究を通して、自然は人の知恵でははかり知れない舞台を提供してくれることに感動しました。研究をやればやるほど疑問が出てきて、自然科学への興味は尽きません。私の研究はその中でほんのささやかなものではありましたが多少とも関与できたことを幸せに思っています。これからの研究の発展を期待します。