




開講部局:情報科学研究科
結縁祥治 教授
並行分散計算特論
授業時間: | 2011年度後期火曜2限 |
対象者: | 情報科学研究科、博士前期課程 2単位、週1回全15回 |
講義目的
並行計算の概念および体系について修得する。特に、通信プロセス計算モデルの表現と意味論について講義し、従来の逐次計算モデルと比較して、並行計算によって生じる問題について、体系的な意味づけとその対処方法について学ぶ。ネットワークを介した情報システムにおける並行計算の具体的イメージを通して信頼性の高い並行ソフトウェアの構築、さらに、具体的な信頼性向上のための形式手法としてモデル検査について述べる。
授業の工夫
本講義では、同時に複数の計算が進行するモデルと計算を表現する体系について講述した。コンピューター同士を高速に接続するネットワーク技術が一般化し、計算資源を有効活用する方法のための基盤となる理論の一つとして、MilnerのCCS(Calculus for Communicating Systems)として体系化されている並行プログラムの代数について基礎的な性質を示した。並行プログラムは入力データに対して命令を順番に実行する従来の逐次的なプログラムとは異なり、同時に実行されている他のプログラムの状態に応じて振舞いが動的に変わる。この特徴は、効率的な実行のための並行プログラムの長所であると同時に、間違いが発生しやすい短所でもある。並行実行特有の現象をとりだして、十分手におえる形でモデル化して、計算資源の有効活用という長所を生かしながら、誤りが発生しないようなプログラムの基盤となる新たな計算の理論について説明した。並行計算では、従来のプログラム検証手法と双対な余帰納的(co-inductive)な概念が有効であることを述べた。
講義中の説明では、難解な式の説明をできるだけ避けて、イメージ中心に理論体系がとらえられるように講義を進めた。さらに、並行プログラムの信頼性を高めるために用いられる時間の扱いについて述べ、最後に検証手法として工業的に一般的に用いられつつあるモデル検査について触れ、今後の並行プログラムの信頼性向上への理論的アプローチを示した。

最新年度の講義と内容が異なる可能性がありますのでご注意ください。