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開講部局:文学部・文学研究科
佐藤彰一 教授
最終講義 - 西洋中世史が解決すべき幾つかの大きな問題
授業時間: | 2008年度退職記念講義 |
日時 : | 2009/2/4 14:00-15:00 |
場所 : | 文学研究科棟2階237講義室 |
弟子の勝利は師の栄光
もともとドライな質なのだが、退職にあたってわれながら呆れるくらい感慨というものが湧いてこない。ひとつには、 目下進行中のグローバルCOE の関係で、三年間特任という形で本学に留まるので、今回はいわば「中締め」というくら いの、軽い区切りのためかも知れない。それでも学部、研究科とは縁が切れ、学生の教育から退くとあれば、教師たるも の懐旧やら後悔やらの感慨にとらわれるのが普通ではなかろうか。反芻した挙げ句たどり着いた結論は、こうである。お 前はこの22年間好きなように振る舞い、非常識にならない程度に思う侭に揚言してきた。何よりも学者として大事にして 貰った。たとえ幾ばくかの心残りがあったとしても、そのつど帳尻を合わせて来たのだから、積もる感慨などある分けが ない。
それでも、冷静に思いをめぐらすならば、胸を去来する事柄は少なからずある。教育、わけても次世代の日本の学界を 支えることになる後進の育成が、教育から離れるとなれば大学教師の総括の最重要のトピックであろう。22年前に前任校 から名大に移った最大の動機は、学問的後継者を養成するところにあった。手前味噌になるが、このミッションは何とか 成就しえたのではないかと思う。今から千年も前にローマ教皇になったシルヴェステル2 世が遺した言葉が、現在の私の 心境をよく語ってくれている。曰く「弟子の勝利は師の栄光 Victoria discipulorum, gloria magistri」。